The Threads of My Name    ~ truth, hope and... ~

The days of weaving a tapestry with my feathers

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歩く ① -chaos-

夢じゃない ひとりじゃない

君が傍にいる限り

けがれない獣には 戻れない世界でも


夢じゃない/スピッツ




終電がなくなったからやった。


体を通り抜ける風が気持ちよかったし、

頭はどんどんこんがらがって、胸が苦しかったから。


タクシーにはいつでも乗れる

手を上げれば

いつでも


「せっかくやし、少し歩こう」

そう思って、軽い気持ちで、歩き始めた。


人生を始めたあの時みたいに、

促されるように。


理由は付けようと思えば、いくらでも付けられたし、

無いと云えば、ひとつも無いとも云えた。




『多分こっちやったよな・・・』

方向音痴が奇跡的に、正しく一号線に沿って、

かすかに、車や電車の窓から見たことのある景色の記憶を総動員して、

そこには居ないいろんな人たちと、

一緒に夜を歩いた。

夜を。

人のほとんど居ない道を。


普段は絶対にやらない。怖いから。

そして、やっぱり何度も怖くなった。


後ろから足音が近づくたびに、

今まで一緒にいて話しかけていた親しい人たちは、一瞬にして消え去り、

内側にぎゅっと集まった濃密な私だけが、

たったひとりで、そこにいた。

こんなところで、ひとりで、私は何をしてるんやろうと思って、

自分が誰やったかも忘れそうやった。


ひとりで夜道を歩くのは、楽じゃなかった。

間違っても、ヘッドフォンで音楽を聴きながらなんて歩かれへんと思った。

毎朝の満員電車でするみたいには。

たくさんの人があんなに近くにいるだけで、

全く何も考えなくてもいいぐらいに、安心するんやな。

全員で誰かを頼って、

そして全員がてんでばらばらに意識を飛ばしてる。

からっぽの容器。


標識が見えた。

もう一時間近くも歩いてるのに、まだ電車で2駅分しか歩いてないことにだいぶ愕然として、

『ひょっとしたら成し遂げられるかも知れない』 なんて、

ほんの僅かでも、無謀にも思い描いてしまった自分にもっと愕然として、

もうええやろと、タクシーに乗ろうと決めたのに、

そんなときに限って、タクシーは一台も走ってなかった。


まぁいい・・・

すぐにつかまるし

もう少し歩こう


とにかくバカみたいに、一号線に沿って歩いた。

私の住む町の名前を頼りに。

毎日電車で通ってるのに、子供の頃から考えるともう何千回も。

目の高さで、自分の歩幅で流れる景色は全くの別世界やった。



まさかの・・・分かれ道が目の前に現れた。

標識らしきものを、どこを探しても見つけられなかった。

さぁ、もういよいよ諦める時がきたと思った。

どっちかに賭けて、そっちの道を歩いて行くには疲れすぎていたし、怖すぎた。


とりあえず、信号を渡ってからタクシーを・・・

と思っていたら、

いい感じに酔っぱらったおばちゃん3人組が、私の横で楽しげに信号を待っていた。


「あの~、○○市ってどっちですかね?」

と、なぜか私はおばちゃん達に聞いていた。

おばちゃん達は、真夜中に突然話しかけてきた怪しげな人間に、

それはそれは親身に答えてくれた。


「え?駅の方に行きたいの?それやったらこっちやけど・・・」

と、おばちゃんA。

「何、え?あんたまさか○○市まで歩いていく気ぃか?
そんなんやめとき!タクシー乗り!乗ったらすぐやからっ!」

と、おばちゃんB。

「いやいや、ごめんなー、おばちゃんらうるさいわなー。」

と、おばちゃんC。


泣きそうやった。あったかくて。

ここで泣いたら、完全にやばい女やと思って、

「いや、はい、タクシー乗ります、もうちょっとしたら・・・多分。」

と伝え、お礼を言ってまた歩き始めた。


なんちゅう素晴らしいタイミングで、挫けそうな私の目の前に現れてくれたんやろうと思った。

道しるべみたいに。

おばちゃん達の言う通りにはできないとしても、

とにかくこっちの道やということだけは、確実に分かった。

そして何よりも、しぼみかけていた血管にまた血が通い始めたみたいに、

足が動いて、心も同じように少し軽く、温かくなった。



つづく・・・

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